膝の痛みと治療の選択肢について

軟骨の再生医療という言葉を、耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これまで、自分の軟骨を使った治療(自家培養軟骨移植)は、保険が使える範囲が限られていましたが、2025年からは変形性膝関節症の方も対象になりました。

軟骨は、膝や肘などの関節で、骨の表面を覆っているクッションのような組織です。関節をなめらかに動かす大切な役割があります。この軟骨は、「硝子軟骨」と呼ばれ、とても滑らかで丈夫にできています。その滑りやすさは、氷の上を滑るアイススケートの約10倍ともいわれています。

そのため、普段の生活では軟骨がすり減ることはほとんどありません。しかし、けがや加齢による変形性関節症によって軟骨が傷んでしまうと、強い痛みが出たり、歩くのがつらくなったりすることがあります。

困ったことに、軟骨は一度傷つくと自然に元どおりになることが難しい組織です。

そこで行われるのが「自家培養軟骨移植」です。これは、ご自身の軟骨を少しだけ取り出し、細胞を増やしてから、傷んだ部分に移植する治療です。これにより、失われた軟骨の修復が期待できます。

ただし、膝の形がゆがんでいる場合は、軟骨を移植しても同じところに負担がかかり、再び傷んでしまうことがあります。そのため、必要に応じて「高位脛骨骨切り術」という手術を組み合わせます。これは、すねの骨の角度を整えて、体重のかかり方をバランスよくする治療です。

この手術は、膝の関節を残しながら行う方法で、主に40代から70代くらいまでの方で、注射やお薬、リハビリなどで十分な効果が得られなかった方、そして比較的変形が軽い方が対象になります。術後は、運動や正座ができるようになる可能性もあります。

一方で、すでに関節の変形が進んでいる場合には、人工関節という治療が適していることもあります。また、手術をしない方法として、痛みを伝える神経を熱で抑える「ラジオ波焼灼術」という治療もあります。

医療は日々進歩しています。ひざの痛みがある方は、「もう仕方ない」とあきらめず、一度医療機関に相談してみてください。

地元新聞掲載                                              執筆者.日本整形外科学会 整形外科専門医                                                    理事長 石井 聡大