高位脛骨骨切り術

担当医師

石井 聡大
前山 彰
(福岡大学
整形外科准教授)
松永 大樹
(福岡大学病院)

高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy:HTO)

高位脛骨骨切り術とは

変形性膝関節症の進行を遅らせる術式で、O脚に変形した足の骨を切り、X脚ぎみに角度を変えることにより膝の内側に偏った過重なストレスを、比較的きれいな軟骨がある外側へ移動させる人工関節を使用しない治療です。

この手術治療の最大のメリットとしては、患者様自身の膝関節を残したまま症状を改善することが期待できる点です。関節が温存、再生されるので、正座など日常生活に対する制限が少なく、スポーツや農業などの仕事に復帰される患者様も多くいます。
身体への負担が少ない手術なので、手術後の経過にもよりますが手術後10日~14日で立つこともでき、1~2週で歩行可能となり入院期間も6週間程度です。※回復には個人差があります。

一方デメリットとして、骨が癒合するまで多少痛みが続きます。ひざの機能がある程度回復するまでは、リハビリをしっかりと行う必要があります。また、骨癒合後、術後約1年で金属を取る手術が必要になります。

また当院では、X脚などの脛骨(すねの骨)の矯正のみでは治療適応がない方でも、太ももの骨(大腿骨)の骨切りを行うことにより、治療を行っております。大腿骨の骨切り術の場合、脛骨のみの骨切りに比べ、体重をかけない期間が長くなるため、リハビリ期間も長くなります。

まとめ

  • 自分の関節は温存され機能は維持される。
  • 日常生活に制限がなく、スポーツ活動も可能となる。
  • 痛みは極めて良く改善される。
  • 手術1週後より歩行訓練を開始、3週間程度の入院で歩いて退院できる。
  • 消失した軟骨が再生する症例もある。
  • 矯正に使用する人工骨(ß-TCP)は2~3年程度で自分の骨に置換される。
  • 60%程度の方が手術後正座可能となる。
  • 体に及ぼす影響(侵襲)が少ない。
  • 骨が癒合するまで痛みが多少続く。機能回復にはリハビリをしっかり行うことが必要。

高位脛骨骨切り術の仕組み

「ひざの痛みと治療方法」より引用

よくあるご質問

Q.手術が可能な年齢はいくつでしょうか?
他に疾患が無ければ基本的に年齢制限はありません。実際に80歳以上で手術を受けている方もいます。
Q.手術後すべての方が正座をすることができるのでしょうか?
半数以上の方が正座をすることが可能になります。手術前に正座ができない場合は難しいことが多いです。
Q.手術後何年か経つと元に戻り痛みが出ることはないのでしょうか?
適切に手術が行われれば、元に戻り再手術になることはほとんどありません。
Q.手術後に膝を使うような運動をしてもいいのでしょうか?
退院後、回復すれば問題なくできるようになります。
Q.入院期間はどのくらいですか?
個人差がありますが4週間~8週間程度です。

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