睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠中に何度も呼吸が止まる状態(無呼吸と呼びます)が繰り返される病気で、睡眠障害の一つになります。空気の通り道である気道が閉塞してしまうことにより無呼吸がおこります。
※「無呼吸」とは10秒以上の呼吸停止と定義され、この無呼吸が1時間に5回以上または7時間の睡眠中に30回以上ある方は睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠中に呼吸が浅くなることにより、眠りが浅くなります。
原因としては、肥満、あごの異常、扁桃腺肥大、睡眠薬・アルコールなどがあります。
肥満体の人、首が短くて太い人、あごが小さい人などにおこりやすいことが知られています。
たかがいびき?されどいびき
いびきは周囲に迷惑をかけるだけかと思いますが、それだけでは済まない危険な場合もあります。
まず、熟睡できないこと。睡眠は脳を休め、疲れをとるためにとても大事なものです。
しかしそれだけではなく、最悪の場合には突然死という事も。
決して大げさな話ではありません。
以下のイラストのようにいびき中に呼吸が止まる場合は要注意です。
危険な睡眠時無呼吸症候群
いびきで心配なのは、睡眠時無呼吸という障害です。
就寝中に、一時的に20~40秒も続く呼吸停止が30回以上おきます。
大きないびきのあと、突然無呼吸となり息が止まります。そして急に「グワッ、ガガ!」とまた大きないびきをかく場合や空気が抜けていくような「ヒュー」という音が出る場合は要注意です。
無呼吸時の酸欠状態は、高血圧や心臓病などの様々な発症リスクを引き上げると言われております。最悪の場合、脳卒中や突然死という事もありえるのです。
発症リスクのある病名 | 健常者との発症リスクの比較 |
---|---|
高血圧 | 1.4倍~2.9倍 |
不整脈・心房細動 | 2倍~4倍 |
脳梗塞・脳出血 | 3.3倍 |
糖尿病 | 1.62倍 |
突然死・脳卒中・心筋梗塞 | 1.7倍 |
ご自身で思い当たる症状はありませんか?
・下記の表でチェックしてみましょう。
①いびきの自覚や指摘 | ⑥起床時の頭痛 |
②呼吸停止の自覚や指摘 | ⑦熟睡感がない |
③日中やたらと眠い | ⑧苦しくて目が覚める |
④集中力の低下 | ⑨夜間の胸痛 |
⑤全身倦怠感 | ⑩尿意で目が覚める |
以上の症状が自覚・他覚される場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が十分にあります。「自分があてはまるのでは?」と思われた方は早めに専門の医療機関を受診しましょう。
検査の流れ
睡眠時無呼吸症候群の診断や重症度の判定、治療法の決定のためには十分な検査が必要です。当院では、はじめに電話か外来にて相談していただき、当院へ来院して診察後に自宅で行える簡易検査を行っていただきます。そこで精密検査が必要な場合は、当院に一晩入院して、色々な電極やセンサーを身体に付けて眠り、睡眠中の脳波や呼吸の状態を調べる終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)という検査を行います。おおまかな検査の流れは以下の通りです。
①電話または外来窓口へ問い合わせ(睡眠検査の希望・相談)
②来院、問診(ESSテスト)
③医師の診察
④簡易検査(自宅にて)
簡易検査の結果次第で以下の通りとなります。
A. 異常無し → ご希望の場合は、翌年以降に再検査が可能です。
いびき・眠気等の症状がある場合は歯科・口腔外科へ紹介して、マウスピースをつけて睡眠する治療ができます。
B. 要再検査 → 当院に入院して⑤精密検査「終夜睡眠ポリグラフィー(PSG検査)」(1泊2日入院)を実施します。
C. 異常あり→ CPAP治療の開始(当院にて)
⑤精密検査(当院にて)
精密検査の結果次第で以下の通りとなります。
A. 異常無し → ご希望の場合は、翌年以降に再検査が可能となります。
いびき・眠気等の症状がある場合は歯科・口腔外科へ紹介して、マウスピースをつけて睡眠する治療ができます。
B. 異常あり → CPAP治療の開始(当院にて)
⑥診断・治療
睡眠時無呼吸症候群の治療については以下の通りです。
治療について
①CPAP治療
CPAPという医療機器を使用して治療を行う方法です。鼻や口から風を送り込み、空気の圧で気道(空気の通り道)の確保を行います。無呼吸・低呼吸・いびきの出現に併せて空気の圧を自動的に調整する機能などもあり、初めて使用する方でも無理なく治療が開始できます。
ただし、CPAP治療は根治治療ではなく、症状を改善する対処療法です。よって、使用を中断すると無呼吸やいびきが再度発生してしまいます。
②スリーブスプリントを用いた治療
睡眠時無呼吸症候群の治療専用のマウスピースを装着することで、就寝時ののどの気道(空気の通り道)の確保を行い、睡眠中の血中酸素濃度を改善し呼吸を楽にさせて「無呼吸」や「いびき」を無くすことができます。
当治療をご希望の場合は、近隣の歯科口腔外科を紹介致します。
③外科的手術
気道閉塞の原因が扁桃肥大やアドノイド肥大などの場合に、手術によって治療を行うことがあります。他にも、鼻の疾患がある方はCPAP治療を効果的に行うことができないため、手術が必要となる場合もあります。
当院では内科(呼吸器内科)と睡眠健康指導士が協力して治療致します
睡眠健康指導士とは、正しい睡眠知識をもとに、地域の人々の健康増進に寄与することのできる資格です。当院では、睡眠時無呼吸症候群の治療をサポートするだけでなく、日常の中でより睡眠の質を豊かなものへとしていくお手伝いをさせていただきます。
睡眠時無呼吸の予防法
・毎日の生活で出来る原因除去から始めましょう。
・(肥満の方は)体重を落とす
第一に、肥満の方は体重を落としましょう。肥満者では気管周囲の脂肪により気管が狭められているため、無呼吸が起こりやすくなっています。減量によって脂肪が減ると気管が大きくなり、無呼吸は起こりにくくなります。
・傾斜マクラ
睡眠中の体位の工夫は有効です。軽症の睡眠時無呼吸症候群ではうつぶせまたは横向きで寝ることが有効な場合があります。
・アルコール・睡眠導入剤の摂取をやめる
無呼吸の誘因となるアルコール、睡眠導入剤をやめましょう。アルコールと睡眠導入剤により、睡眠中の空気の通り道を開く筋肉の弛緩が著しいと、気管が閉塞する可能性があります。
よくある質問
Q. 検査に痛みは無いんですか?
ありません。基本的には専用の装置を装着して寝ていただくだけになります。